がん政策における患者の役割と貢献
がん対策基本法がもたらした影響
がん患者とその関係者からの強い声を受けて、政党を超えた議員立法によって2006年6月に「がん対策基本法」が成立し、2007年4月に施行されました。がん対策基本法には、厚生労働省に「がん対策推進協議会」を設置し、日本のがん対策のマスタープランたる「がん対策推進基本計画」を策定するとありますが、その際、協議会の委員に「がん患者および家族または遺族を代表する者」を含むと、同法の20条で規定したのです。
2007年4月に開催された協議会では、全18人の委員のうち患者関係者が4人選ばれていました。そして、この協議会では、患者関係者委員がしばしば議論をリードしました。そのことは、会議の議事録においても確認することができます。
また、がん対策基本法は11条において、各都道府県が「都道府県がん対策推進計画」を策定することと規定しました。そして、
国のがん対策推進基本計画は都道府県の計画に関し、「策定に当たっては、がん患者及びその家族又は遺族の視点も踏まえることが重要である」(38ページ)と、都道府県においてもがん対策推進計画を策定する協議会に患者委員が参加することが望ましいとしました。こうしたこともあって、現在、ほとんどの都道府県が患者委員を任命しています。
高まる患者の役割と、患者への期待
2007年6月に内閣での閣議決定がなされて実施に移されたがん対策推進基本計画では、患者の役割が次のように記述されています(39ページ)。患者が医療政策決定の主体であるとの位置づけは、画期的なものといえます。
「がん患者及び患者団体等は、がん対策において担うべき役割として、医療政策決定の場に参加し、行政機関や医療従事者と協力しつつ、がん医療を変えるとの責任や自覚を持って活動していくこと」
国のがん対策協議会などでの実際の患者委員の取り組みをみて、がん対策基本法作りにかかわったある国会議員は、「がん対策に意見を言うだけではなく、計画を作り上げる立場になっている」と高く評価しました。あるがん病院のトップは、「われわれがずっと言っても聞いてもらえなかったことが、患者さんから言えばあっという間に実現した。もっと患者さんに声を挙げてもらいたい」と語っています。
都道府県のがん対策推進計画を策定する過程においても、患者委員が積極的に発言をすることにより、計画が素案から成文になる間に、大きな改善が見られた事例もありました。こうして、国、都道府県などの行政の立場の職員にも、「患者関係者が積極的になるとがん対策が進めやすくなる」という意識が徐々に広まってきています。
患者委員が、地域のがん対策に関する議論をリードすることが増えています。また、地域の医療関係者、政治家、行政関係者、地域住民などの当事者をつなぐ役割を、患者委員が果たすことも多くなっています。患者が前面に立って、地域の当事者がスクラムを組んで、いっしょにがん対策を推進する--そんなモデルが形成されつつあります。社会から、患者関係者の活躍に対する期待がますます高まっている状況にあるということができるでしょう。